追浜の未来をみんなで考えるシンポジウム
2025年8月3日(日)追浜コミュニティセンター北館にて、「追浜未来のまちづくりシンポジウム2025」を開催しました。炎天下にもかかわらず、現地会場とオンライン視聴を合わせ300人以上の方々にご参加いただきました。
今回のシンポジウムでは、第1部にて「追浜えき・まち・みちビジョン」と「追浜駅交通結節点整備事業計画(バスタ計画)」について説明が行われ、続く第2部では追浜にゆかりのある登壇者の方々と一緒に、追浜のこれからの姿についてのディスカッションが行われました。
ここでは、シンポジウム当日の様子をお届けします。
会場入り口の様子
株式会社Simplee様の協力のもと、託児スペースも設置されました
開会挨拶
追浜えき・まち・みちデザインセンターのセンター長を務める、東京大学大学院工学系研究科教授 羽藤英二より、開会挨拶が行われました。
羽藤センター長は、地域の方々に対して行われたこれまでのアンケートの意見が世代によって異なったことから、「自分の立場を離れて、周りの人がどんなことを求めているのかを考えてみるのも大事です」と語りました。さらに災害に強いまちづくりの拠点として、バスタ計画の重要性にも言及すると、「一緒にどんなまちづくりが考えられるか?ということを、今バスタを拠点に考えていくべき時ではないか」と開会挨拶を締めくくりました。
追浜えき・まち・みちデザインセンター センター長 羽藤英二
追浜えき・まち・みちビジョンの紹介
続いて、追浜えき・まち・みちデザインセンターのディレクター伊藤雅人より、「追浜えき・まち・みちビジョン」の紹介が行われました。
「追浜えき・まち・みちビジョン」はこちらからご覧いただけます。
追浜えき・まち・みちデザインセンター-ディレクター 伊藤雅人
市民の声を集めることと、盛り上げることの両方が必要
ビジョンのご紹介発表の後、ビジョン検討委員会の委員としてビジョン策定にも携わっていただいた追浜観光協会会長の下澤氏は、「やっぱりまちづくりは様々な多世代の方々をターゲットにしている。まあターゲットはないようなものですね。」「もっと見たいじゃないですか、新しいまちを。だから、皆さんのご意見をぜひいただければと思います。」と来場者に呼びかけました。
羽藤センター長は「市民の方々からの声がやっぱり一番大切」としたうえで、「本当に困っている人は声を上げられないこともある。だからそういう声を、追浜のバスタ計画が応えられるものにしていくためには、僕らが出て行って、いろんな声を集めていくことと同時に、盛り上げていくことの両方が必要ではないかな。」とコメントしました。
「追浜駅交通結節点整備事業計画(バスタ計画)」の紹介
国土交通省 関東地方整備局 横浜国道事務所 副所長 山口大介氏より、令和7年6月に改定された「バスタ計画」の紹介が行われました。
「追浜駅交通結節点整備 事業計画(改定)」概要版はこちらよりご覧いただけます。
国土交通省 関東地方整備局 横浜国道事務所 副所長 山口大介氏
「バスタ計画」に対し、羽藤センター長は「バスタ単体の計画だけでなく、国道357号線を引き込み、駅前通りにつなげ、そこにバスタができることで、災害時の代替経路が立体的に確保されていることに意味がある」と述べ、「バスタ計画」がもつ災害対策の重要さを強調しました。
続いて「バスタ計画」のイメージ動画が放映され、
羽藤センター長は「もっともっと皆さんとよいものにしていきたいと思いますので、ぜひデザインセンターにお越しいただいて、引き続き意見交換をさせていただければ」と来場者に呼びかけました。
展示ブース
休憩時間中、会場後方の展示ブースでは、来場者に見学していただきながら各ブースのスタッフ担当者と意見交換をする場が設けられました。
ここでは展示ブースの内容と休憩時の様子をご紹介します。
横浜国立大学大学院都市計画研究室 「まちづくりアイデアカード」
横浜国立大学大学院都市計画研究室-まちづくりアイデアカードの展示ブース
追浜駅交通結節点整備事業計画(バスタ計画)
追浜駅交通結節点整備事業計画(バスタ計画)の展示ブース
追浜えき・まち・みちビジョン/周辺事業
追浜えき・まち・みちビジョン/周辺事業の展示ブース
休憩時間には羽藤センター長が各ブースを訪れ、来場者と意見交換を行いました。来場者からは駐車場・駐輪場の確保に関するご意見や、追浜のイメージアップに関する提案などをいただきました。
ブースにシールで投票をする参加者
第2部 地域座談会
羽藤センター長がファシリテーターを務めた第2部では、追浜にゆかりのある登壇者とともに「あなたが思う追浜の魅力は?」と「自分がまちで挑戦してみたいことは?」という2つのテーマを掘り下げながら、追浜の未来についてディスカッションが行われました。
今回ご登壇いただいた登壇者の方々をご紹介します。
追浜観光協会会長 下澤敏也氏
育児コミュニティ OPPAPAMAMAILE代表 神馬彩夏氏
株式会社横浜DeNAベイスターズ 野球未来創造室 野球普及・振興部 矢吹優一郎氏
関東学院六浦高校2年生 管野美亜氏・中里美来氏
追浜えき・まち・みちデザインセンター 副センター長 野原卓 ディレクター 竹内萌絵
地域座談会の様子(左から 羽藤氏、下澤氏、神馬氏、矢吹氏、六浦高校の生徒2人、竹内氏、野原氏)
様々な人・交通・機能が集積する追浜には大きな可能性がある
ファシリテーターの羽藤センター長が投げかけた〈あなたが思う追浜の魅力は?〉という質問に対し、登壇者からは追浜の地域コミュニティの強さや交通利便性、居心地の良さ、さらに学校や企業の拠点が集まり産学の機能が充実している点などが回答として上がりました。
下澤氏 僕が考える追浜の魅力は、「つながり合い」。ちょっと言葉になっていないかもしれないのですが、人のつながりであったり、あとは地域、ここは金沢区も近いので地域のつながりであったり、あとは世代間のつながりであったり、これがうまくつながりあっているのが追浜かなと。
「人がとってもいいので、僕は本当にこのまちが大好きです。」と語る下澤氏
神馬氏 「横浜でもあり、横須賀でもある」。横浜とか都内にも行きやすいし、横須賀の魅力を知れば知るほど、横須賀の方に今度足が向くようになって、横須賀にもすごく行きやすい場所だなと感じました。
横浜出身で現在は追浜在住しながら育児支援コミュニティを運営する神馬氏
矢吹氏 「人情味あふれる地域コミュニティ」。追浜の皆さんが選手を見かけた時に、頑張れと応援してくださるし、追浜駅から商店街を通って横須賀スタジアムまで行く道中においても、皆さんの会話が生まれている。人と人が顔を合わせてつながっているまち・コミュニティっていうのがすごく素敵だなと感じていました。
会社のマインドセットに「集団ではなくてチームである」という教えがあります。集団とは、ただ人間が集まっただけ。チームとは、その集団コミュニティを作っている、コミュニティの集まりがチームであると。チームであることによって、みんなで共通の認識を持って、共通の目標に向かって進んでいくことができる。交通結節点もそうですし、再開発の話もそうですが、みんなで一致団結して進んでいけることが追浜の魅力かなと感じております。
横須賀スタジアムの運営にも携わっていた矢吹氏
中里氏 「居心地の良いみんなの居場所」だなと思います。いつも地域の方々が楽しそうにお話ししていて、本当に温かくて安全で居心地のいいまちだなと思います。追浜には多くの学校があって登下校の時も追浜駅を利用している学生が多いので、下校の時もちょっとご飯を食べたり、ちょっと話したりして帰るということがしやすい場所だなと。
羽藤 いろんな地域から学生が集まってきているから、居心地のいいみんなの居場所を自分たちで作っていきたいなという気持ちもあるということですね。
通学の時に見ているという、追浜の地域の人同士の交流について語る中里氏
竹内 「産学の拠点が多い」。追浜の魅力は、小学校が4つ、中学校が3つ、高校も3つくらい近くにあって、企業もたくさん拠点を持っているので、小さい頃からずっと大学、そして働くまで追浜にずっといることができる。小学校も中高大とあり、企業と連携もしやすいまちなのではないかと思う。企業と子供たちとが連携することでよりまちが盛り上がると思っています。
羽藤 全世代が居続けられるまちは、あるようでなかなかないと思います。これが追浜の強みなのだというイメージが湧きますよね。いろんな企業もあるし、高校もあるし、大学もあるし、小学校、中学校、それで高齢者の方がいて病院もある。その良さをトータルで活かしていけることが追浜の良さだと。
野原 今までの重工長大型産業から、新しいクリエイティブな産業を誘致して新しいまちをつくる、というのが全国、世界中で起こっています。今まで持っていた力を次につなげてまちづくりに挑戦しているまちは多くなく、追浜は今まで持ってきた力と次の新しい力が重なり合って、次の未来を描けるという意味で、すごく可能性を持っているまちだと思っています。そういう意味でみなさんが言っていただいた、結び目になるような、色々な話を結びつけることで、よいまちづくりができるのではないかと期待しています。
「企業と子供たちとがどんどん連携してほしい」と語る竹内ディレクター
続いての質問〈自分がまちで挑戦してみたいことは?〉に対しては、人やコミュニティに着目した意見が多く発表されました。
下澤氏 「人に逢いたくなる街」 。追浜は人がよい、という話をしたが、今リアルのコミュニティが減ってきている。追浜は人が魅力、文化資源ということで、ここの人たちに会いに来るまち、というところ中心にこれから挑戦をしていきたい。
羽藤 そうですよね。これから変化も起こる中で、そこをくぐり抜けてきた人こそが追浜の財産であり、そうした人々を結びつける場がバスタや周辺のまちづくりに含まれるのではと思います。
「人こそ資源」と語る下澤氏
神馬 「意見交換のできる拠点作り」。子育てのしやすさは、結局、人ではないかと思って。地域のつながりとかコミュニティが普段からあれば頼ることができる。駅前に芝生広場ができても親がつきっきりでこどもを見る緊張感の中にいると全然和むことができないです。そこで地域のみんなで子供を育てるという視点を育てれば、障害のある方にも優しくなれるし、ご高齢の方にも優しくなる。今から10年、30年かけてそのコミュニティ作りをするためには、この拠点作りが必要なのではないかなと思いました。
羽藤 1人で困っている人は結構いると思います。そういう時にここに行ったら聞いてくれる、何とかしてくれる人とか場所があることはすごく良いことですよね。いろいろな問題が駅の周辺は起きがちなので、単純にお金だけで解決するのは無理ですし、子供たちの声は受け入れてもらえないと、やっぱり子育ての息苦しさも増してしまうから、そういう空気を作っていくことが大切かなと思いますね。お互いに助けたり、助けられたりということがあるとよいと思います。
「私がみんなのオカン、地域のばあば」になると語る神馬氏
矢吹 「まちのシンボル」として、我々ベイスターズは存在したいな、と思っています。この追浜の強さはコミュニティで、共通言語として野球を使って、このまちのコミュニティを拡大していくことができればなと考えています。そのシンボルとして横浜DeNAベイスターズが、このまちの未来を創造するパートナーでありたいです。ビジョンの中に、我々の試合のパブリックビューイングかな?というイラストがありましたが、そんなふうにコミュニティを想像できるものを積極的に考えていきたいですね。
羽藤 ボールパークのまちづくりって最近すごく盛んですね。球団経営とまちづくりが一体的になってきている。バスタの中でベイスターズのプログラムなどをやっていくことで、追浜のシンボルや、心の支えになってくる展開もあると思います。
「パブリックビューイングをぜひやりたい」と語る矢吹氏
管野氏 「変化をおそれない」。考え方が変われば、やりたいことも出てくると思ったので、「変化を恐れない」ことが大事だと思って書きました。怖いという気持ちをワクワクが吹き飛ばしてくれるから、追浜の住民の方々にもワクワクが広まって、「私たちはこういうことをやっていきたいな」という人が増えていくことが一番いいのかな、と思います。変わっていくと追いつけない、という意見は結構あると思いますが、どんな世代の人でも楽しんでもらえる追浜になると一番いいですね。
羽藤 ワクワクすることを自分たちがやっていけることで、若い人も自分の居場所を感じられる、ということですね。
管野氏 他のまちでも世代がだいたい区切られている感じがしていて。私の理想としては、みんながごちゃ混ぜがいいなと思っていて、追浜はそんなまちの先駆けになってくれたらと思っています。
野原 都市計画の分野で「混ぜる」ということが、実はまだ技術としてもなく、どうやって混ぜればいいか分からないというのが今の状況。
本当に自分の意見を自由に出せる場があるまちというのは、強いまちだと思います。いろいろな分野で混ざり合うことが今求められていて、そうしたことを追浜で先にできたら、これは真似したいまちになるのではないかなと。本当に私自身もワクワクしました。
羽藤 オフィス街で、土日に誰もいなかった丸の内は混ぜることでショッピングもレストランもあって、ずっと365日賑やかになったと言われている。でも我々が追浜で、皆さんとやりたいのはそういうことではなくて、川もあったり、海もあったり、高校生もいたり、工場もあったり、子育て世代もいたり、三浦半島の食材もあったり、それを混ぜて新しい追浜にするということ。
「みんなが変化を恐れないで、ワクワクした空気に包まれるような追浜にしたいな」と語る管野氏
竹内 「追浜まちあるきクイズ」をしたい。高校生や小学生のいろんな目線でクイズを作って、追浜を訪れた方に答えていただければ、地元の人も追浜に来た人もまちを知ることができる。先日の「おっぱままつり」でも実施し色々な方に参加していただける可能性があるものではないかなと思ったので、デザインセンターとしてぜひやりたいなと思っています。
羽藤 アップデートしたものでぜひまた皆さんも参加していただけたらと思います。
まちあるきクイズの構想を語る竹内ディレクター
最後に羽藤センター長は、「日産工場の撤退といったまちの大きな変化の中でも「ワクワク」するような楽しさを見出していき、助け合いながらやっていけるようなまちづくりができるとよい。シンポジウムにお越しの方々にはぜひ味方になっていただき、この追浜のバスタを拠点に、一致団結してできるだけ早くまちづくりを進めていければと思います。」とこれからのまちづくりへの意気込みを語りました。
閉会挨拶
追浜えき・まち・みちデザインセンターの副センター長を務める横浜国立大学大学院 都市イノベーション研究院准教授の野原卓より、閉会挨拶が行われました。
野原副センター長は、追浜が交通的・地形的・歴史的に重要な結節点であるとし、「まちのポテンシャルや潜在力を発揮していくことがすごく大事なこと」と語りました。そして「色々な形で皆さんとディスカッションしながら、次のまちづくりを考えていくのが我々デザインセンターの役目」と、今後の追浜えき・まち・みちデザインセンターの展望を語り、シンポジウムを締めくくりました。
追浜えき・まち・みちデザインセンター 野原副センター長
ご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
■開催概要
日時 | 2025年8月3日(日)14:00 – 16:10 |
場所 | 追浜コミュニティセンター北館3階集会室 |
主催 |
追浜えき・まち・みちデザインセンター |
後援 |
横須賀市 |
協力 |
国土交通省 関東地方整備局 横浜国道事務所、横浜国立大学大学院都市計画研究室、株式会社Simplee |