発信・交流

第2回 追浜まちづくりトークセッション

第2回 追浜まちづくりトークセッション

「まちの営繕」と「ケア」でつくるまちの拠点

2025年122()に、第2回目となる「追浜まちづくりトークセッション」を追浜えき・まち・みちデザインセンターにて開催しました。第1回のトークセッションに引き続き、追浜に住む方、働く方や地域に関わる学生などが集まりました。

今回は、東京都豊島区の東長崎を拠点に、設計事務所「ara(アラ)」、カフェ「MIA MIA(マイアマイア)」やギャラリー「IAM(アイアム)」を運営されているアリソン理恵さんをお招きし、「地域の文化を育む、まちなかの場づくりについて」をテーマにお話を伺いました。

アリソンさんのトークの後には、参加者のみなさまに「えき・まち・みち空間における拠点のアイディア」を考えていただきましたので、本記事ではアリソンさんのトークの内容と、参加者のみなさまからのアイディアをお届けします。

 

「プロジェクトが生まれ続ける環境」が、良いまちをつくる

アリソンさんが活動する東長崎は、池袋から電車で2駅ほどの場所に位置する、商店街が残る街です。そんなまちで、アリソンさんは「仕組みと設えで生活を豊かにする」というテーマの設計事務所araと、

「日々の風景を作る」MIA MIAというコーヒーショップのほか、「文化と遊びから街を耕す」カルチュラル・キオスクIAMを運営しています。

その3つを一緒に運営し協働させていくことで、「プロジェクトが生まれ継続する環境を整え、私たちの暮らしの場を豊かにする」ことを実践されています。

ここでいう「プロジェクト」とは、単なるイベントのことではなく、まちの中に生まれる新しい動きや居場所のことを指しています。

アリソンさんはトークの中で「これから、人口を増やすことやイベントの集客数だけでまちの良さを図るのは難しくなっていきます。

たとえ人口が減っていったとしても、そのまちで常に新しいプロジェクトが生まれ続けていれば、それは『良いまち』と言えるのではないか」とおっしゃっていました。

 

まちの人と拠点をつくる

プロジェクトの実践の第一歩となったのが、20204月にオープンしたカフェ「MIA MIA(マイアマイア)」でした。

一般的にカフェは「サービスをする・される」場所になりがちですが、アリソンさんはこの場所をそんな固定概念を超えた、新しい空間にしようと試みました。

Photography by yurika kono

お店づくりのプロセスもまちにひらかれたものでした。東長崎のまちにお金を落としたいと考え、リノベーションの際は徒歩圏内の職人さんを探し、あえてドアを開け放して、まちの人が入ってくることが出来る環境で工事を行ったそうです。

すると、オープンの日にはすでに街の人たちが『おめでとう』と声をかけてくれる関係性ができていたそう。拠点を作る段階からまちの人を巻き込むことは良いアイディアではないか、とアリソンさんもおっしゃっていました。

 

自分たちのお店だけではなくまち全体の価値向上に向けて

アリソンさんは、同じ東長崎エリアでIAMというギャラリーも運営しています。平日は設計事務所として使用している場所を、週末はギャラリーショップとしてオープンするというスタイルです。

アリソンさんが目指しているのは、「まち歩きをしたくなるまちにする」こと。

個人店だけで頑張るのではなく、まちの個店をつなぎ、東長崎のまちの価値を上げる活動をされているそうです。

例えば、東長崎を紹介するマップを作って配布したり、ホームページで東長崎のスポットを発信し続けたりしています。メディアの取材依頼をいただいたときは、必ず「東長崎」というまちの特集をお願いしているそう。

その結果、オープンから1年後には雑誌『POPEYE』の表紙を飾り、その他のメディアでも東長崎が大きく特集されるようになったそうです。

カフェMIA MIAやギャラリーIAMなどの拠点をハブとして、アリソンさんの目指す「まち歩きしたくなるまちにする」ことが出来てきているのではないかと感じました。

 

「まちの営繕」を通してまちに関わる

アリソンさんは、一級建築士事務所araの主宰として土地のリサーチから住宅のデザインまで幅広く手掛けられる傍ら、「まちの営繕」も行われています。

まちの営繕とは、まちに関わる練習をする場所を、まちの中に作っていき、まちの様々な空間を自分たちで手入れしていく活動です。

この活動が始まったきっかけは、カフェMIA MIAの工事の際に、敷地脇のコンクリートが割れていたことからでした。

その際に、割れ目を埋める補修ではなく、あえて取り除いてみたところ、地域の人がコンクリートの下が土であるのを見て驚いていたそうです。

その様子を見たアリソンさんは、現在のまちは舗装の下にある土すらも想像できない状態にあり、自分の住むまちに対する想像力が育たない環境では、災害時の対応も難しくなるのではと感じたことで、まちの営繕の活動が始まりました。

コンクリート舗装の亀裂の割れ目にユーカリを植えたところ、近所の方が土壌改良や定期的な水やりを行い、今では2メートルを超える木に育っているのだそうです。

 

お話を伺っている中で、「まちは私たちが暮らす場所であるはずなので、自分の部屋の模様替えを行うようにまちを自分たちの場所としてメンテナンスしていく必要があるのではないか」というアリソンさんのお考えに大変共感しました。

現在は、池袋駅のグリーン大通りで行われている社会実験にて、まちの営繕の考え方を織り込みながらストリートファニチャーの設置を行っているとのこと。

人の滞留場所がないという課題に対して、実験的に滞留する場所を作ったり、植栽帯では植え替えのワークショップを行ったりと、人がまちをメンテナンスできる場所を生み出しているそうです。まちの営繕の活動の広がりを感じます。

Photography by kenta hasegawa

 

地域の文化を育む、場づくりのために

アリソンさんが本トークセッションのテーマと関連してご自身の活動を振り返った際に、「ケア(Care)」「カルティベイト(Cultivate)」「カルチャー(Culture)」の3つのキーワードを挙げていただきました。

「カルチャー」の語源を読み解いていくと、まずは気にかける、手入れするという意味の「ケア」から始まるのではないかというお話がありました。

文化を育むうえで、まずは気にかけて、耕して(カルティベイト)、解して、育てて、そしてやっと文化(カルチャー)が生まれてくるフローをたどるのではないかということです。

 

では、文化を育むためにまず私たちが行える大切な3つのことを、アリソンさんに伺いました。

 

立ち止まるきっかけ

立ち止まっていても不自然ではない風景を作ることがとても重要ではないかということを、最初に挙げていただきました。

本棚があるギャラリー前の空き地は、緑やベンチがあり、立ち止まって見えるような設えになっているとのこと。

カフェMIAMIAの前のユーカリも会話のきっかけを生み出すきっかけになっているそうです。そんなシンプルなものでも、立ち止まるきっかけになると話していらっしゃいました。

 

挨拶のきっかけ

アリソンさんは、イタリアのデザイン研究者エツィオ・マンズィーニ氏の「ソーシャルイノベーションは、近隣で他者と出会いやすい環境から生まれる」という考えに共感している、と話していらっしゃいました。
アリソンさんは、コミュニケーションからイノベーションや困りごとを解決するきっかけが生まれるのであれば、まずは「挨拶」する環境をつくらないといけないのでは、という考えから、

カフェや設計事務所、ギャラリーのデザインにも、その思想を取り入れていらっしゃいます。

例えば、カフェMIAMIAでは、窓側に調理場を置くことで、お店の外からも声掛けが出来る環境にしています。設計事務所やギャラリーでは、外の人とアイコンタクトを取り会釈できるようにされているそうです。

また、挨拶のきっかけをつくるためには、とにかく屋外で何かやってみることで、活動を外からも見てもらえることも重要であるとのことでした。

 

活動・表現の場

最後に、アリソンさんが紹介してくださったのは、まちの中にやりたいことがを思いついた時に実現できそうな「活動と表現の場」を作っておくことです。人々のコラボレーションの練習が出来る場所を作っていきたいと考えているのだそう。

こういった場づくりはハードルが高いと感じるかもしれないが、例えば「段ボールを差し出してダンスのステージを作ってみる」といった、簡単なもので特別な環境がつくれると良いとおっしゃっていました。

アリソンさんは実際に、カフェMIAMIA前でラジオ体操を行ったり、ギャラリー前に土を耕せる場所をつくったり、やりたいことを叶える設えと仕組みづくりの両方を進めています。

文化を育むために大切な3つのことを伺う中で、追浜地域のみなさまと一緒に活動を進めていくためのデザインセンターの場づくりを考えることが出来ました。

デザインセンターがまちの「翻訳者」に

最後に、アリソンさんからデザインセンターへの提言をいただきました。

デザインセンターが社会実装に向けてデザインやツールの検討を行いながら、自治体や公共との間に入ることで、民間企業等や地域のみなさまが主体的に行うまちづくりを進めていくことが出来るのではないかというお話がありました。

また、デザインセンターがまちに市民が手入れできる部分を作り、市民と公共の「翻訳者」として、三者をつなげることで、アリソンさんの最初のお話にあった「プロジェクトが生まれ続ける環境」ができ、

よいまちが生まれるのではないかという、未来の追浜のまちづくりに向けたコメントをいただきました。

他にも、まちの中に活動をおこし、社会実験から制度化に繋げるという循環を回していくことで、追浜がよりよいまちの状態になるのではないかとのお言葉もございました。

 

えき・まち・みち空間の拠点アイディアを考えました

後半は、参加者のみなさまと一緒に「えき・まち・みち空間における拠点のアイディア」を考えアイディア共有を行いました。

アリソンさんのお話に刺激を受け、とても議論が盛り上がっていましたので、ここではその一部を紹介します。

A班では、 追浜はスポーツとの親和性が高いので運動を楽しめる拠点があるとよいといった意見や、地域の誰もが情報を持ち寄り編集し発信したり、活動を発表できたりするとよいというアイディアが出ました。

B班は、高校生や230代が気軽に立ち寄れる拠点や、本が読めたりZINEをつくったりなど、自由に滞在できる交流の拠点があるとよいという話をされていました。また、追浜の既存の建物を利用した柔軟な拠点づくりが出来るとよいというアイディアもありました。 

C班からは、まちに事業者として関わる人を増やすために、コラボレーションが進む場があるとよいといった意見や、他の人のアイディアを見て、自分もそれに反応してアイディアを出すような場が、えき・まち・みち空間にあると面白いという話がありました。

 

活発なアイディア共有の様子を見たアリソンさんからは、今回のような様々な立場の方がまちづくりに関して会話する貴重な場が、追浜の色々な場所で開催できると良いと講評をいただきました。

 

文化を育むえき・まち・みち空間づくりに向けて

今回のトークセッションでは、アリソンさんから「地域の文化を育む、まちなかの場づくり」についてお話をいただき、地域のみなさまと「えき・まち・みち空間における拠点のアイディア」を話し合いました。

トークセッションでは、すべての班で発信・交流拠点があるとよいという意見がございました。現在、デザインセンターでは「OPPAMA MAGAZINE」や地域団体の発行物を配架しております。

こういった追浜の情報や地域のみなさまの活動が発信できる拠点になり、引き続き追浜で進む事業に関する情報発信も行いながら、デザインセンターがより地域のニーズに応えられる場になるよう、場づくりを進めていきたいと思います。

また、アリソンさんが、デザインセンターがまちの翻訳者になるとよいとおっしゃってくださっていたように、

これからも追浜えき・まち・みちデザインセンターでは、追浜地域の市民や民間企業等のみなさまと一緒にまちづくりのアイディアを考え、自治体や公共等と調整をしながら形にしていきたいと考えています。

 

将来のえき・まち・みち空間の拠点づくりの検討に、このトークセッションやアイディア共有が大変役立つ内容になったと感じております。ご登壇くださったアリソンさん、そしてご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

いただいたご意見等を踏まえながら、引き続き、デザインセンターの活動や、えき・まち・みち空間の拠点のあり方を考えていきます。

今後も第34回のトークセッションが控えておりますので、地域のみなさまの生のご意見をお伺いし、追浜のまちづくりに活かしていきたいと考えております。

是非ご参加、ご関心をお寄せいただけますと幸いです!

 

開催概要

日時

2025年12月2日(火)1830 – 19:50

場所

追浜えき・まち・みちデザインセンター

主催

追浜えき・まち・みちデザインセンター