発信・交流

第3回 追浜まちづくりトークセッション

第3回 追浜まちづくりトークセッション

能登の教訓と追浜の地勢から考える、自律的な防災拠点のあり方

2026年28()に、追浜えき・まち・みちデザインセンターにて第3回目の追浜まちづくりトークセッションを開催しました。

当日は想定外の雪が降る中でしたが、追浜に住む方、働く方や追浜に関わる学生が、今回のテーマ「防災まちづくり」を考えようと集まりました。

今回のトークセッションのゲストには、地盤防災工学の専門家であり、追浜駅が最寄り駅である学校法人関東学院の理事長兼関東学院大学 理工学部規矩大義(きく ひろよし)教授をお迎えし、能登半島地震の最新の調査報告を軸に、追浜のまちをどう守り、災害時にも機能させていくのか等についてお話をいただきました。

 

また、今回は特別に追浜えき・まち・みちデザインセンターの副センター長を務める横浜国立大学大学院の野原副センター長との対談も実施。

「フェーズフリー(日常時と非日常時を地続きに考える)な防災まちづくり」について、参加者のみなさまと共に考える時間となりました。

本記事では、トークセッションの内容と、参加者のみなさまからのアイディアをお届けします。

 

第一部:登壇者トーク(規矩先生)

能登半島地震の教訓:地理的側面と建物構造の課題

 規矩教授は、2024年元日に発生した能登半島地震の現地調査から得られた知見を、まず共有くださいました。

能登半島は、半島という地理的特性から「交通網が極めて脆弱である」という課題を抱えています。過去の巨大地震と比較して犠牲者数が抑えられたという見方もありますが、それは「たまたま居住人口が少ない過疎地域だったから」という側面が強いと規矩教授は指摘します。もし同規模の地震が都市部で発生していれば、被害は想像を絶するものになっていた可能性があったとおっしゃっていました。

今回の地震の被害拡大の要因について、規矩先生は能登の住宅構造が一因とおっしゃっていました。能登の住宅は重厚な瓦屋根が特徴ですが、これに対し柱が少ない大広間を持つ構造が多く見られており、冠婚葬祭を自宅で行う建築文化によるものが、地震の激しい揺れに対しては「重い屋根を少ない柱で支える」という構造的な弱点となり、多くの建物倒壊を招いたとのことでした。

 

二次被害を拡大させた液状化とインフラの寸断

地震直後の火災や消火活動についても深刻な状況だったとのお話がありました。

輪島市などでは、倒壊した家屋のがれきが消火栓の上に積み重なり、物理的に水が供給できなくなりました。また、液状化現象によって地中の水道管が破壊され、送水そのものが止まったことも被害拡大の大きな要因だったとのことです。

その他、 液状化による道路の隆起・陥没により、道路が寸断され、消防車が現場に近づくことすら困難な状況が重なり、二次被害が拡大したのだと言います。

 

追浜の地域特性と「情報の空白地帯」への懸念

 能登半島地震の教訓を追浜に照らし合わせ、多くの共通点とそこから想定されるリスクを、先生にご共有いただきました。

 

まずは孤立のリスクです。

追浜の南北を走る幹線道路は国道16号に依存しており、東西は山に囲まれています。どこかのトンネルや道路が寸断されれば、瞬時に追浜も隔離されたエリアとなる危険性があります。

 

次に地盤の課題です。

 追浜駅周辺は、かつて海だった場所を埋め立てて発展してきた歴史があり、液状化の危険度が高いエリアに位置しています。自分が住んでいる場所の履歴を知ることが大切だと先生はおっしゃっていました。

 

最後に情報の空白地帯となることへの懸念です。

横浜市金沢区側は比較的開けていますが、行政の中心である横須賀市中央部とは山で隔てられています。そのため、大規模災害時には市役所などからの情報や支援がスムーズに届かない情報の空白地帯になる懸念があるとのこと。

そんな追浜において、駅周辺に独自の防災拠点を置くことは、地域存続のために極めて重要だと述べられていました。

 

「防災拠点」の役割:生活の継続とフェーズフリー

追浜の地域存続のために極めて重要という「防災拠点」について、規矩教授は、これからの防災拠点に求められるのは「被害を防ぐこと」だけでなく、「住民が生活を継続できる機能を設けること」だと話されていました。

 

100年に一度の南海トラフ地震のような激甚災害への備えも必要ですが、10年に一度程度の台風や集中豪雨にも耐えうる防災拠点となることが、現実的かつ重要なことであると指摘されていました。

また、最近では、生活空間の安全確保を行った上での在宅避難も推奨されています。防災拠点に行けば正しい情報が得られ、水・食料・トイレなどの衛生機能が確保できるという信頼できる拠点となることで、地域住民が安心して在宅避難を行えるようになるのではないでしょうか。

 

「のと里山空港」に見る行政と民間の理想的な連携

 規矩教授が、災害時の拠点機能の理想形として「のと里山空港」の事例をご説明くださりました。災害時の混乱の中でも協力して活動ができたのは、日常から「顔が見える関係」が構築されていたことが背景にあったそうです。

 

のと里山空港は、民間の空港ターミナルビルと行政センターが一体化しており、行政センターでは国土交通省の出先機関と石川県の職員が同じフロアで業務を行っていたのだそう。行政はもちろん民間の担当者も日常的に顔を合わせていたため、発災直後の混乱期においても煩雑な手続きを省略し、即座に協調して活動を開始することができたとのことです。いざという時の連携において、関係性がいかに重要かを感じるお話でした。

他にも、のと里山空港は、普段から住民がイベント等で立ち寄る馴染みの場所だったこともあり、日頃から人が集まる交通結節点や公共施設を、いざという時の拠点として活用する」というフェーズフリーの考え方が、災害時に大きな力を発揮したといえます。

 

第2部:登壇者トークセッション(規矩先生×野原副センター長)

土地の履歴を理解し、復興のあり方を考える

 野原副センター長は、地域の地質的・歴史的な背景を理解することの重要性をお話しされていました。 2007年の能登半島地震で被災し、一度は復旧した場所が、今回の震災で再度被災した事例もあります。その土地がどのような履歴(かつて海だった等)を持っているかを知ることは、同じ被害を繰り返さないために大切なことです。

 

フェーズフリー:日常の延長にある防災

 また、「フェーズフリー」の考え方と具体的な事例を参加者に共有してくださいました。公園のベンチが災害時には「かまどベンチ」になる設備の事例を例に挙げ、そのかまどベンチを使ういざという時に「ベンチを開ける鍵がどこにあるか誰も知らない」では意味がなく、 日常のマルシェやイベントで、実際にそのベンチをかまどとして使い、火を焚いてみる。そういったことを継続していくことで、日常の延長に防災があることが浸透するのが良いのではないかとおっしゃっていました。

 

産官学の連携と「顔の見える関係」

野原副センター長は、追浜駅前の特徴として、駅で降りる人と駅から乗る人の両方が多くいらっしゃることを挙げていました。追浜がそういったまちであるのは、追浜駅の周辺に大学や病院、多くの企業や住宅地などが複合的に存在しているからでしょう。また、多くの方々が日常的にいるまちであるという事実は、災害対応において大きな強みになるのではないかとおっしゃっていました。

強みを活かすためには、普段からの交流や災害時を想定した検討を事前に行っておき、まちの人同士でだれが何を出来る人かを知っておくことも大事であるとのことでした。

 

追浜の交通インフラから考えるまちの役割

追浜駅前は、遠くから物資が集まる拠点にも、他地域を助けるための拠点にもなり得る、広域的な役割を果たすポテンシャルがあると話されていました。また、海側の港の活用を具体にイメージすることや、鉄道という交通インフラをどう防災機能に取り込むかという点の重要性についても共有がありました。追浜の駅から港までを一体的な防災空間として捉えることで災害時の対応力が飛躍的に高まるのではないかというお話でした。

 

個人と地域、行政が連携して考える防災

 野原副センター長からは、徒歩や自転車で15分以内にすべての生活機能が収まる「15分都市」の概念をご紹介いただきました。自分たちの身の回りの範囲で、自分たちで完結できるまちをつくっておくという考え方は、防災においても有効で大切な考え方です。

日々の生活の中で近い距離でのつながりを構築しておくことが、結果として災害に強いまちをつくるのではないかとのことでした。

 

防災においては、自分たちで生活を立て直せる方法を個々人が考えておき、個人で頑張ることが出来るレベル、周囲や行政に助けを求めるレベルなどのレベル分けをしておけるとよいというお話もありました。

個人・地域・行政が連携して行うことを整理し、地域の普段からの繋がりで自立的な防災をつくっていくことが、追浜において目指すべき姿なのではないかと締めくくりました。

 

デザインセンターでの活動を通して、追浜の人の力を感じることが多くあります。

今回の「防災まちづくり」に関するトークセッションでは、日常的な関係性の構築や、フェーズフリーなまちづくりについてもお話をいただけ、追浜の住民のみなさまだからこそできる防災まちづくりなのではないかと考えながらお話を聞いていました。

 

第3部:アイディア共有

「えき・まち・みち空間における防災拠点のアイディア」

後半のワークショップでは、3つの班に分かれて具体的な課題や防災拠点に関するアイディアが会話・検討されました。

その一部を紹介します!

 

A班では、課題として 発災時の状況(災害種類)によって、対応方針が異なるため、画一的な対応が難しい。また、多様な属性の人に対する情報共有の難しさが挙がりました。

提案としては、「地域FM」として情報を発信・共有するラジオの活用や、地区ごとにサテライトの防災拠点があるとよいといった意見がありました。

 

B班では、課題で東日本大震災の際に、追浜に勤める人々が帰宅困難者となった事例をあげ、国道16号や鉄道が止まった際の対策が必要だというお話がありました。

提案では、 天井のある全天候型の場所(駅前など)を確保して帰宅困難者を受け入れられる一時避難場所づくりや、追浜の地形を考えると、谷戸地域などの配送が困難な場所へ、駅前を拠点としたドローンによる物資配送サービスがあっても良いのではないかという話がありました。

 

C班では、追浜特有の地形による災害リスクや、地域間での防災意識や対策が異なる点が課題として挙げられました。

提案では、浦郷小のような集合住宅と小学校が近い特性を活かした防災訓練、顔の見える関係性を作るといったコミュニティ防災に関するものや、日常の活動を通じて、自助・共助の意識を育てることなどが挙がっていました。

 

総括

規矩教授と野原副センター長による講評では、「所属の垣根を超えた連携」の重要性を改めてご共有いただきました。追浜という土地に住み、働く人々が、日常的にデザインセンターに集まり、小さな情報を共有し合うこと。その「顔の見える関係」の積み重ねこそが、災害時に地域を救うインフラとなるのではないでしょうか。

 

今回のトークセッションでは、トークの中やアイディア共有の中で防災拠点における具体的な考え方を沢山示していただきました。

帰宅困難者を受け入れるような場所を作るとよいのではといったこれまでの経験を経たご意見や、地域住民が日常的に使い、災害時には防災拠点となるような場が作れるとよいのではないかといったトークの中で上がっていたお話を基に、今後も追浜のえき・まち・みち空間における防災拠点を考えていきます。

 

デザインセンターとしても、今回のトークセッションで提案にあったコミュニティ防災や、トークの中で出ていたフェーズフリーの考え方については、追浜のまちに浸透させることや、防災まちづくりに関する取り組みを行っていくことが出来るのではないかと考えています。

今後も、自治体や公共、民間企業等、そして市民の皆さまと共に、追浜らしい防災の姿を形にしていきたいと考えています!

 

ご登壇いただいた規矩先生、野原副センター長、そしてご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました!

4回のトークセッション、そしてトークセッション全体でいただいたアイディアのまとめも発信していきますので、お楽しみに!

 

当日の動画は【こちら】からご覧いただけます。

YouTubeに遷移します

 

開催概要

日時

2026年2月8日(火)13:00 – 15:00

場所

追浜えき・まち・みちデザインセンター

主催

追浜えき・まち・みちデザインセンター