他地区の交通拠点・まちづくり事例から考える、追浜らしい駅前交通拠点のあり方
2026年3月7日(土)に、追浜えき・まち・みちデザインセンターにて最終回となる追浜まちづくりトークセッションを開催しました。
今回トークセッションのテーマは「駅前交通拠点の整備」。
追浜の顔である駅前空間が、単なる移動の通過点ではなく、地域の個性を活かした「居場所」へと生まれ変わるためには何が必要か。
追浜にお住まいの方、働く方、そして追浜に関わる学生のみなさまと共に、駅前交通拠点の未来を考えました。

今回のトークセッションで、当デザインセンターのセンター長を務める東京大学大学院の羽藤英二教授に登壇して頂き、国内の先進的な2事例を軸に、交通拠点やまちづくりが地域にもたらす価値についてのお話を伺いました。
本記事では、トークセッションの内容と、参加者のみなさまからのアイディアをお届けします。
デザインセンターの役割とは
羽藤センター長は冒頭、ご自身が運営に関わるデザインセンターの事例に触れ、デザインセンターは、「地域のみなさまがまちづくりを考えるだけではなく、まちづくりの担い手となれるように活動を行っている」ということをお話しくださりました。
追浜えき・まち・みちデザインセンターが2025年度に開催したシンポジウムやトークセッションは、追浜のまちづくりの担い手となるような方と一緒に活動していきたい、地域の方々と共にまちのアイデンティティを再発見するという思いを持って企画を進めてきました。
そんな思いも、トークセッションの中で羽藤センター長のお言葉を通して地域のみなさまに伝えられていたら幸いに思います!
交通拠点を人が集まる拠点に
最初の事例として紹介されたのは、岐阜県中津川市の「付知(つけち)地区」です。
中津川市は、建設が進むリニア中央新幹線の「岐阜県駅」が置かれる場所で、付知地区は20年に一度行われる伊勢神宮の式年遷宮で使われるご神体を納める器である「御樋代木(みひしろぎ)」の御用材を切り出すまちとしても有名なのだそうです
羽藤センター長がこの地区で行ったのは、地域資源の掘り起こしでした。まずは「地域映画」の撮影に取り組み、地域住民と「まちのアイデンティティの共有」を行ったとのこと。
まちの風景を撮った地域映画は、ナレーションを入れず、お祭りの様子や御樋代木を切り出す風景を記録したものです。ナレーションやテロップが無いからこそ、映像や音に注目する、ひとつひとつのシーンがかっこよく見入ってしまうようなものでした。

追浜でも、地域の「歴史」や「アイデンティティ」を可視化するために、まちの公民館の一部を開放し、地域の歴史を展示してみたり、地域のみなさまが当たり前だと思っている追浜の風景を改めて記録に残したりするのもよいのではないかというアイデアをいただきました。
追浜は、これから周辺事業の進行によってまちが大きく変わります。だからこそ、今の風景を丁寧に記録し、アイデンティティを再共有するプロセスが不可欠であるとおっしゃっていました。
また、付知地区では古民家のリノベーションを行い、そこが今では地域のひと・もの・ことが集まるハブになっているというお話もありました。
その古民家は、1階が地域デザインミュージアムと地元の食材を活かしたレストランとして活用され、2階には地域ホテルもあるそうです。

併せて、地域の自動走行バス「付知bin」の停留所となっており、交通拠点として活用されています。その他、子どもたちが遊ぶ水辺も作っており、人が集まり、物が売れ、新しい物やことが集まる拠点となっているのだそうです。
改修前は活用されず、売り上げがゼロだった場所が、今では月50万円を売り上げる拠点になり、地域の雇用や活気に寄与しているというのは、素晴らしい事例だと感じました。
追浜でも「ひと・もの・こと」が集まり、それらが循環する仕組みや場所づくりを行っていくことが大切なのではないかと考えます。

工事期間をチャンスに変える
続いて紹介されたのは、愛媛県松山市の事例です。中でも、耐震工事中の道後温泉本館における、松山アーバンデザインセンターの活動・広場整備と花園町通りの道路改修という、2つのプロジェクトについてお話しいただきました。
道後温泉本館:耐震工事をまちづくりと回遊のきっかけに
1894年に建築された道後温泉本館の耐震工事は、2019年の1月から7年に及ぶ長期プロジェクトだったため、工事中の状態が続くと地域に影響があると考えました。
そこで、耐震補強だけではなく地域に足りないものをつくろうという話になり、人が集まり、マルシェや子どもたちが遊べる場所をつくろうということで広場整備の案が挙がったのだそうです。
松山のデザインセンターでは、子どもたちと一緒にワークショップを行い、広場でどんなことがしたいかということを聞いた上で、地元工場の協力のもとワークショップの内容を形にすることができたそうです。

広場という場所を使って自分たちにしかできないことを話し合い、それを地域で体現した事例だと感じました。
広場では、有名なアーティストの装飾や、アート展示を行うといったことも行われており、観光客の回遊にもつながったとのこと。今では新しいコーヒーショップがまちにできるなど、大通りではない通りの魅力もどんどん高まってきているとのお話がありました。

花園町通り:道路が歩行者のための空間へ
松山市駅前の花園町通りでは、片側3車線の計6車線道路を2車線へ削減し、広い歩行者空間をつくりました。
この歩道拡幅については、沿道にお住まいの方が元々の歩道を独自に活用していたため、最初は沿道の住民の反対があったとのことですが、社会実験などを通して地域の事業への理解を深め、日を重ねるにつれ賛同者が増えていったのだそうです。

拡幅前は、通りに面したビルの1階は駐車場として利用されることが多かったそうですが、歩行者が増えることで、駐車場ではなく、セミナーが出来る空間や歩道図書館のような活用事例が出来るなど、これまで花園町通りにはなかった機能が広がっていったとのこと。
追浜においても、建物の中ではなく通りの外でイベントをやっていくことが出来ると、今までにはない、追浜のえき・まち・みちの使い方に繋がっていくのではないかと羽藤センター長はおっしゃっていました。
また、花園町通りの歩行者数は、拡幅前のおよそ2倍になり、地価も上がったということで、追浜でも同様にプラスの変化が起こせるように、今後も事業を一歩ずつ進めていくことが大事だと感じました。

緩やかな繋がりがまちを強くする
トークセッションの締めくくりに、羽藤センター長からこれからのまちづくりについてお話しいただきました。
これまでのまちづくりは、目標に向かって全員で頑張るようなものでしたが、これからは「お互いが緩やかに繋がり、共通理解を持ちながら尊重し合っている状態や関係性」が大切になっていくのではないかということでした。
そんな関係性を作るために、デザインセンターが媒介となって、地域の企業等や教育機関、そして地域住民のみなさまを繋いでいく。そしてそれぞれの得意分野の活動を、駅前交通拠点を軸に広げていっていただき、デザインセンターや駅前交通拠点(バスタ追浜)が追浜のまちをよくするきっかけの一つになればと思います。

最終回のトークセッションは、これまでの公共空間・拠点づくり・防災まちづくりの回で挙がっていた、駅前交通拠点や広場の重要性を、事例からひも解くことが出来る大変貴重な回となりました。
デザインセンターの役割として、「地域のハブ」となることが重要なのではないかということを改めて感じられる機会となりました。
追浜のえき・まち・みちを活用するための提案をいただきました
後半のワークショップでは、トークの内容からインスピレーションを受けた参加者のみなさんから、追浜の駅前交通拠点に関するアイディアが多数挙がりました。

A班では、バスタにバスの到着時刻を視覚的に分かりやすく表示する電子掲示板の設置や、高齢者のスキルを発揮できる場づくり、駅から自転車でアクセスしやすい仕組みづくりといった意見がありました。B班では、実体験を起点とした MaaS(マース)の導入や高台や谷戸地域と駅を繋ぐ小型モビリティの充実、安全のために歩行者と車を分ける2層構造の空間づくりについての意見が交わされました。

C班は、ベイスターズの練習場や球場というまちの資源を活かしたバス路線や、駅前での物資配送サービスの他、図書館の出張コーナーなどの日常的に立ち寄れる仕組みについてもアイディアがありました。D班からは、バスタと商店街の連携や商店街の空き店舗を活用した短期間の賃貸や、子どもたちが遊び方を自分たちで考えられるような、世代を超えて交流できる多目的広場が必要ではないかという意見をいただくことが出来ました。

交通拠点が「まちのネットワーク」の核に
今回のトークセッションを通じて、追浜駅周辺で進む各事業は、追浜のまちをより良くするための「きっかけ」になるのではないかと感じました。
デザインセンターとしても、羽藤センター長からいただいた「デザインセンターがまちの媒介となってほしい」といったメッセージのもと、今回挙がった2つの事例のように、地域の方々と一緒にまちづくりを行っていきたいと改めて感じています。

今回のみなさんのアイディアは、これからのえき・まち・みちの検討に大切に活かしていきます。引き続き、デザインセンターの行っていく活動や進行していく事業に関心を持っていただけると嬉しいです!
ご登壇いただいた羽藤センター長、そしてご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました!
開催概要
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日時 |
2026年3月7日(火)13:00 – 15:30 |
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場所 |
追浜えき・まち・みちデザインセンター |
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主催 |
追浜えき・まち・みちデザインセンター |
